教育費に身ぐるみはがされた中年サラリーマンの逆襲

教育費の巨人にアラフィフサラリーマンが無謀な闘いを挑みます。

第四編 ブラック企業がはびこるのはSEがバカだからである

はじめに

第三編をアップしたのが、なんと2012年の1月! 1年半以上ぶりとなってしまいました。

第四編は「明治維新以降も、欧米と比べて日本がパッとしないんだけど、なんでだろう?」という問題提起から始まり、「その原因とは人民の無知文盲即ちこれなり」とバッサリ斬って、さらに当時の日本の病巣に迫るという展開です。

そこで今回は、「ブラック企業がはびこるのはSEがバカだからである」という少し過激なタイトルにしてみました。

日本のネット企業が束になってもGoogle先生にまったく歯が立たない件について」というエントリーにも書かれているように、現在の日本のネット業界もパッとしません。この記事を読んだ時は、正直、まるで人ごとのように感じました。

 しかし、福沢諭吉先生が第四編で書かれているように、パッとしないのは、一人ひとりのSEの責任でもあったのです。。。今までの仕事に対する姿勢を振り返り、自戒の念を込めて、本編を訳してみました。

日本のIT業界がパッとしない原因

日本のIT業界について、あるSEはこう言う「確かにこの先何が起こるかわからない。しかし、いくらなんでも、消えて無くなることはないだろう。今の調子で順調にいけば、少しずつは成長するだろう」

一方で「あと、20年か30年経たないとどうなるかわからない」と存続を疑う者もいる。

将来を悪く言うアナリストの言葉を鵜呑みにし、明日にでも潰れると思い込み、身の処し方を考えているSEもいる。

そもそもこのように業界の存続についての話が出るのは、存続について疑いがあるからである。皆が我が国のIT業界ついて何かしらの不安を抱いているということであろう。

日本のSEならば、そういう事実に対し、黙っていられるであろうか?いや、いられるはずがない。

企業が日本のIT業界の命運を握っているのはもちろんのこと、一人ひとりのSEの力も重要なのだ。業界の存続と発展は、企業とSEがそれぞれの責務を全うすることで実現される。

今の日本のIT業界が外国のIT業界と比べて劣っていること。それは、発想力、技術力、実行力である。これらが三位一体となって事業が発展するのだが、残念ながら不十分だ。

これまで、日本企業に怠慢があったわけでもなく、実力がなかったわけでもない。ある根深くて致命的な問題のために、ほとんど改善されていないのだ。

その問題とは、SEがバカだということである。

業界はそれに気づいており、さまざまな資格制度や人材育成プログラムなどを駆使して、優秀なSEを輩出しようと努力してきた。

それに反して、ブラック企業は増加の一途を辿っており、SEはますますバカになっている。

業界の構造

大企業は資金力があるため、人材育成にも積極的だ。

しかし、大企業に属するSEは目先の実務のことばかりを考え、学習意欲がない。研修に行っても、居眠りをしたり、内職で実務を行ったりしている。

企業が研修へ行かせる意味が全くわかっていない。

せっかくのスキルアップの機会を自ら潰し、業務効率化の意識も低いため、長時間勤務の問題はいつまでたっても解消されない。

このように、大企業に所属するSEも、ビジョンもなく与えられたタスクをただこなしているだけの者が多い。

そのくせ、エリート意識だけは無駄に高く、協力会社(という名の下請け)へは、異様に偉そうな態度を示す。企業の看板を外されたら自分に何が残るのかを全く自覚していない。


一方、下請となる中小零細企業へ目を向けて見る。

こういった企業は、いかにSEの稼働率を上げるかが、経営の最重要課題となってしまっている。

SEのスキルアップなど一切考慮せず、ただ目先の金に追われ、声がかかったところに売り飛ばしているだけである。

SEをやりがいのない現場へ放り出し、派遣先にいわれるがままに、長時間勤務を強いている。さらに派遣先から単価を抑えられた分のシワ寄せをすべてSEの給料へ押し付ける。

そのくせ経営者は自分の収入だけはしっかり確保し、日々、遊興に明け暮れている。

SEの退職は、経営者の生活を脅かす。そのため、経営者は、自分のあらゆる権力を乱用し、圧力をかけ、退職を阻止する。

追い詰められたSEは、運が悪いと、体や精神を病んでしまう。

経営者は、反省するどころか、悪い評判が広まったり、労災などで、余計なコストが発生することを怖れるあまり、すべての責任をSEへ転嫁しようとする。

いわゆるブラック会社とはこう言う会社のことを指すのではないだろうか。

そして、そのようなブラック会社に勤めているSEにも問題がある。いやなら辞める権利ももっているにもかかわらず、辞めようとせず、自らの境遇を嘆くばかり。

行動を起こしたかと思えば、匿名で世間に助けを求め、自分に対する処遇の改善を求めるだけ。

自分自身を変えようという発想もないし、会社を良くしようと思う気持ちも一切持ち合わせていない。

いつか独立したいとうそぶきながら何も行動も起こさない。試しに独立して何をしたいのかを問うてみると、楽して稼げるような濡れ手で粟のビジネスばかりを妄想ししているだけだ。

業界がパッとしない根本的な原因

こういった課題は、以前から認識されており、少しは改善されているのであろうが、かけたコストを考えると、効果はないとしか言えない。

それはなぜか?

この問題はトップダウンの力だけではどうすることもできない問題だからである。

「SEが未熟な間は、管理を厳しくし、SEが独立心を持つのを待って、徐々に管理をゆるくしよう」という考え方もあるが、それはうまくいかないことは歴史が示している。

日本は長年に渡って、支配する側と支配される側に分かれていた。支配される側は、ひたすら受け身で、自分の「損」を最低限にしようと、うまく支配者をごまかしながら過ごしてきた。

会社の利益、国の利益なんて本気に考えられるわけがない。

企業は、そのようなSEの気風を正そうとして、強権を発動してきたが、全くの逆効果なのである。

「支配」「被支配」の風土はこの国の風土として染み付いてしまっている。


大企業の一人ひとりのSEと話してみると、意外とまともな人間が多い。

個人の持っている志はみな崇高だ。

しかし、いざ組織の一員に組み込まれると、だめな風土に飲み込まれてしまうのだ。あたかも一人の人間の中に複数の人格がいるかの様だ。

それはなぜだろうか?

結局のところ、個人の意思は、その「風土」に押しつぶされているのだと言える。

こういったことが問題の根幹にあるため、国を挙げて、MicrosoftGoogleを超えるようなIT企業を興そうとしてもうまくいかないのだ。

つまり、事態の打開のためには、まずこの風土を一掃することが重要となる。

「達人プログラマー」のミッション

その風土を一掃するためには、トップダウンによる施策では無理だ。この状況を言葉で伝えてまわってもなかなか理解されないだろう。

誰かが先駆者となって、手本を見せるしかないのだ。

手本たり得るのは、1つのプロジェクトに一人はいるかと思うが、いわゆる「達人プログラマー」である。

しかし、単純に彼らに頼れない事情がある。

達人プログラマーは、プロジェクトを経験しながらスキルアップを続け、ある程度のレベルに達すると、大企業へ転職してしまう。
そして、悪しき風土に毒されてしまうのだ。

日本の課題、業界の課題を認識しながらも、大企業に入ってしまうと悪しき風土に毒されてしまっているのだ。

わが国のIT業界を盛り立てるためには、国や大企業も頼りにならず、達人プログラマーもいまいちとなれば、我々がバカSEどもを先導し、達人プログラマーらにも進むべき道を示すしかない。

我々はもちろんIT技術には疎いが、幕末明治の時代に先駆的に欧米の文化に触れ、それなりの地位を築いてきた。

維新の改革にも、微力ながら貢献し、我々が関与しなかった各種改革についても、我々が望んでいたものだった。そのため、世間は我々を「改革者」として認め、我々を目標としているもの少なからずいたのである。

今、新しいことを先導するのは我々「改革者」しかいないと切に思うのだ。

変革を実現するためには、「命じる」よりも、「諭す」方が効果がある。諭した上で背中で語る方となお良い。

我々はこれまで、一身独立して、それなりの地位を得、教育、ビジネス、法律、出版と日本国民の分限を越えない範囲であらゆることをやってきた。

国の誤りに気づけば、地位を失うことを恐れず、堂々と議論し、先述したような悪しき風土の一掃に努めてきたのである。

そもそも独立してできることは、多分野に及ぶ。SEも一人ひとり得意分野は異なるだろう。

我々は巧くやるための手段を教えたいのではない。ただ、「独立」と言う方向性を示したいだけなのだ。

我々が歴史に残した爪跡を見て「SEは、業界や企業の歯車ではない。SEは独立して、自分のミッションを遂行し、業界を自ら変革する意気込みで仕事をするべし」と言うメッセージが伝われば、SEは漸く自分のミッションを見つけ出し、悪しき風土から脱却し、業界の一メンバーとして、歯車ではなく、変革推進のコアメンバーとして、業界の発展に貢献するであろう。

最後に

本章では、達人プログラマー、業界を、そして社会を変えたければ、大企業に入るよりも、独立するべきという説を述べた。もし、これに反論があるのなら、是非伝えて欲しい。その意見が正しいと思ったとき、私は考えを直ちに改める用意がある。

付録

こちらのエントリーについて、いくつか質問があったのでそれを以下に記載する。

1.業界や社会を変えるには、やはり影響力のある大企業に入った方がよいのではないか?

本文に書いたように、トップダウンの力だけでは業界を変えることはできない。これまで国や大企業が中心となって、いろいろやってきても効果がなかったのが現実だ。

ベンチャーによる挑戦は、確かに多くの困難が待ち受けているだろう。

しかし、可能性がある。

やってみないとわからないが、可能性が少しでも残っていることに立ち向かうのが「勇者」というものだろう。


2.国や大企業に優秀な人材が入ってこなくなったらまずいのでは?

全く問題ない。そもそも現在はポストが多すぎるのだ。

業務が合理化され、要員が減れば、組織にとっても国民や顧客にとっても良いことづくしではないか。

そもそも人を抱えるために不要なポストを作っている現状が問題なのだ。

また、優秀な人材が日本を出て行くわけではない。日本へ貢献することには変わりがない。


3.達人プログラマーに独立すると、業界の反対勢力になるのでは?

器が小さい。繰り返しになるが、政府に勤めていようが、大企業に勤めていようが、ベンチャーに勤めていようが、業界をよりよくしたいのは思いは同じである。

何も怖れることはない。

4.独立したら、収入が減るのでは?

まったくもって問題外の質問だ。

君子のいうことではない。高度な教育を受け、スキルを身につけているれば、どういう地位でも活躍できるはずである。

仮に、官僚や大企業の方が報酬をもらえるとすれば、自分の実力以上の利益を貪っているということだ。

独立したら生計がなりたたなくなるような、大組織の人間は、国や企業の利益を貪っているだけの小物で、我々の友人ではない。

おすすめ本

学問のすゝめ (岩波文庫)

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学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

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学問のすすめ (まんがで読破)

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